防衛省守屋元次官のゴルフ接待スキャンダルが、ロッキード事件以来の疑獄事件に発展する公算が大きくなってきた。
@次期輸送機エンジンをGE社へ決定するプロセスに深くかかわっていた
Aエンジン輸入を防衛省とGE社の直接取引きにする案件を潰した
B同エンジンの輸入窓口を「日本ミライズ」の随意契約するよう主張した
以上、三つの疑惑が立証されるまでには、まだ、紆余曲折があるだろうが、国会喚問の「ノー」がそのままとおるとは思えない。
意外な展開があるとすれば、守屋元次官が逆襲に転じて、久間・額賀元防衛長官の関与をチクるケースである。
今回の事件は、GEの商権を日本ミライズ(守屋元次官・宮崎元専務)に奪われた山田洋行(久間・額賀元防衛長官)サイドが、守屋と宮崎の過剰接待を検察にリークしたのがきっかけで、もともと、内紛がらみだった。
事件解明の推移が、山田洋行=善玉、日本ミライズ=悪玉の様相をていしているのは、山田洋行側に立っているのが、日米安保のフィクサー(事情通)と呼ばれている秋山直紀(日本平和・文化交流協会・専務理事/安全保障議員協議会・事務局長)だからで、この両団体に、久間・額賀とペンタゴン(米国防総省)、米司法局がついている。
米司法局の協力を仰いでいる検察が、守屋・宮崎潰しのシナリオを変更して、山田洋行へ捜査の矛先をかえるとは、ちょっと、考えにくい。
だが、今回は、検察が主導するマスコミ論調の裏をかいて、山田洋行側の汚点を追ってみよう。
久間・額賀の関与が「政界ルート」なら、こちらは「金融ルート」である。
山田洋行は、02年に一億八千万円の水増し請求が発覚して問題になったが、ふしぎなことに、防衛省は、取引停止の処分をおこなっていない。
山田洋行は、いったい、どんな会社なのか。
親会社は、山田地建(ゴルフ場)や山田ファイナンス(地上げ屋)、弥生不動産などを中心にしたコングロマリットで、山田グループとよばれている。
山田グループは、地上げや商法違反行為で、以前より、悪名が高い。
なにしろ、弥生不動産の不良債権(113億円)を処理した際は、米国企業の株式(150億円)や銀座の一等地にあるソワドレギンザビルなどの資産や担保物権を提供することなく、債権回収機構(RCC)に67億円の代理弁済をさせているのだ。
山田洋行から、宮崎元専務ら有志がでていったのは、このとき、山田グループの総帥、山田正志が、山田洋行を三井住友銀行にさしだして、600パーセントの株主配当(37億円)をとるなど、当時、赤坂支店長だった西川善文と組んで、不正な資金操作をおこなったからだった。
山田正志は、もともと、不正融資で逮捕された東京相和(東京スター)銀行・長田庄一の番頭だった男である。長田が失脚したあと、西川にのりかえ、西川も、山田という懐刀をえて、旧住友銀行の不良債権処理にのりだしてゆく。
やり方は、山田が用意した不良債権の受け皿へ西川が融資をおこない、収益物件にしたのちに転売するという<飛ばし>で、当時、これらの融資は「西川案件」(旧住友銀行融資3部・不良債権処理)とよばれ、頭取以下、暗黙の了解事項だった。
旧安宅産業・旧平和相互銀行・旧イトマンなど、旧住友銀行の歴代頭取が関与した巨額不良債権を処理する必要があったからで、融資3部は、そのための特殊な融資部門だった。
<飛ばし>というのは、新たに融資した別会社に不良債権を買い取らせる粉飾で、一種の不正融資である。その経済効果は――
@受け皿を用意することで、追加融資を可能にする
A競売による債権の買い叩きを防ぐ
B地上げなどの操作をやりやすくする
C清算を先送りして、値上がりを待つ
などで、山田と組んだこの<飛ばし>が、西川案件の処理法だった。
許永中らによって、数千億円が闇社会へ持ち去られたイトマン事件では、600億円を投じたTK青山ビルが最大の不良債権となった。西川は、これを受け皿会社へ移し、土地・建物とも収益物件に仕立て上げてのち、外資ファンドに売却した。
このとき、地上げをおこなったのが、山田キャピタルだった。
両人の癒着は、山田が介入した金丸信の親族会社「富士緑化」の所有地に、山田が自宅(調布)を建てていることからもうかがえる。
この土地は、旧住友銀行が融資した一億円の抵当が付いた土地だった。西川は、旧住友銀行が担保にとった土地の上に自宅を建てたわけだが、自宅ができあがったときは、抵当権は抹消されていた。
06年、金融庁は、旧住友銀行が、融資と抱き合わせで、デリバティブ商品を販売していたとして「一部業務停止命令」の行政処分を発表している。このとき、不祥事がおきた01〜04年にかけて頭取だった西川ら経営陣にも、月額報酬の返還など、きびしい処分が下された。
じつは、それ以前、赤坂支店長だった西川がさかんに<飛ばし>をやっていた時代、旧住友銀行では、個人の預金30億円が消えるという、前代未聞の事件がおき、現在、東京地方裁判所で、公判がすすめられている。
訴えているのは、風俗店経営の在日韓国人女性で、訴状によると、預金が、無断で株式投資に流用されたあと、そっくり、消えてしまったという。
旧住友銀行は、土地およびソープランド二店舗の売却代金約30億円の預金(神田支店)を担保に、ファーストクレジット(住友信託銀行系)やサン・アミティ(99年倒産/負債総額757億円)などのノンバンクからほぼ同額の資金をひきだし、約三億円の委託保証金を積むなどして、提携関係にある大和証券をとおしてデリバティブ取引をおこなっていたもので、預金が消えたのは、ノンバンクからの借入金と相殺されたためだった。
旧住友銀行は、預金をデリバティブ商品の購入(リスクのある株取り引き)にあてることを預金者につたえておらず、預金者がこの事実を知ったのは、大和証券に開示をもとめた「顧客勘定元帳」によってだった。
預金がデリバティブ商品の購入にあてられていたことはわかっているが、三井住友(旧住友銀行)は、預金が消えた理由を「内部書類が廃棄されているため不明」として、説明を拒んでいる。
堀田庄三と磯田一郎の両大物頭取が、安宅産業・平和相互銀行・イトマンで積み上げた不良債権を――最後の大物頭取といわれる西川善文が<飛ばし>や商法違反、預金強奪という手法で消しこんだのが、現在の三井住友銀行なのである。
ちなみに、04年、三井住友銀行に査察にはいった金融庁は、ゴールドマン・サックスなどに大量の物件を売却した同行系列の大手町建物に8000億円の<飛ばし>があるとみて、西川の退陣を要求したという。
旧住友銀行のバブルの深傷を清算した西川善文、その西川とコンビを組んでいた山田グループの総帥・山田正志が、今回の防衛省事件を仕掛け、事態は、山田の思惑どおりにすすんでいるが、守屋元次官が逮捕されることになれば、公判をつうじて、新たな巨悪の構造が、つぎつぎと明るみにでることだろう。
ちょっとした、ドキドキがほしいな
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