2014年05月23日

 静和病院B

 ●「違法性がなかった」だけではとおらない再審請求
 静和病院事件では、一般病棟の看護師が数人足りないという容疑に、詐欺罪がくわえられて、病院長と事務長に、それぞれ、懲役6年6月、5年6月の懲役刑が科せられた。
 看護師不足は、日本中すべての病院が抱えている問題で、静和病院の一般病棟で、看護師が、たとえ若干名、不足していたとしても、病院長や事務長らに、殺人罪並みの重刑を科すのは、社会通念や刑罰適正原則から逸脱しているように思われる。
 院長と事務長は、逮捕されて以後、保釈なしで、いまなお拘留中だが、同事件によって、「経営充実度」病院ランキング関東第3位(日経新聞/2004年3月8日)の設備を誇った同院も廃業に追い込まれて、現在、巨大な病院建物が廃墟と化している。
 重ねて指摘するが、このきびしい刑罰の発端は、一般病棟の看護師が数人足りなかったという健康保険法違反の容疑である。
 健康保険法違反は、せいぜい、不正受給した診療報酬の返還や課徴金納付命令等の行政処分が通例で、同法違反による逮捕、実刑判決は、前例がない。

 重罪が科されたのは、同法違反にもとづいて、詐欺罪が適用されたからである。
 だが、詐欺罪の適用には、おおいに、疑問がある。
 一つは、詐欺罪の前提となる看護師不足(健康保険法違反)が、証明されていないことである。
 判決文に、必要看護師数や不足していたとする看護師の人数について、記載がないのは、健康保険法違反や詐欺罪をみとめて、有罪判決(執行猶予)を受けた元婦長ら共犯者(実行犯)の自白による罪状認定が、そのまま、援用されたからであろう。
 自白事件の罪状認定を、否認事件に援用して、よいものか。
 二つ目は、詐欺罪容疑の根拠が、元婦長など共犯者の自供しかないことである。
 元婦長は、必要看護師数を19人と証言している。
 これは、誤認で、法が定めている人数は、9人である。
 元婦長は、一般病棟で勤務にあたっていた看護師が9人だったとも証言している。
 看護師が9人なら、健康保険法違反はなかったことになる。
 健康保険法違反がなかったのなら、詐欺罪も、成立しない。
 詐欺罪を自供した元婦長ら共犯者の証言は、詐欺罪の証拠になっていないのである。

 判決文は、必要看護師数の基準を「3対1(=19人)」としている。
 この一点だけで、有罪判決の破棄、差し戻しになってよい。
 健康保険法違反の有罪判決が、法定必要看護師数を19人とする誤った基準によって、下されているからである。
 判決文が、みずから、誤判であることを白状している。
 この誤判は、制限速度をまちがえて、制限速度内で走行していた車を捕まえ、罰金をとったのとは、わけがちがう。
 院長と事務長に、医師や経営者としての死の宣告をあたえ、5年近く拘留して、結果として、関東第3位の大病院を施設を擁する廃院に追い込んだのである。

 三つ目は、課徴金が課される診療報酬の不正受給容疑に詐欺罪を適用するのは、二重罰則で、前例がないことである。
 診療報酬20億円の不正受給が発覚した同じ静岡県の「熱海温泉病院(翔健会)」に詐欺罪が適用されたであろうか。
 診療報酬の不正受給額が50億円にのぼる愛知県の医療法人「豊岡会」に詐欺罪を適用して、代表者に重刑を科したであろうか。
 静和病院が、不正に受給したとされる診療報酬の額は、両違反額の5%、2%に満たない8700万円である。
 しかも、静和病院の吉田院長は、摘発された直後、驚いて、厚労省厚生局静岡事務所に1億円の小切手と謝罪文を持参している。
 だが、静岡県警の強制捜査にくわわった同事務所から、受け取りを拒絶されている。
 診療報酬不正受給の疑いがあるのなら、同事務所が、事前に、立ち入り検査をおこなうべきだったろう。
 だが、強制捜査まで、同事務所から、何の音沙汰もなかったという。

 静和病院事件は、行政から県警、地検、司法が一体となって、地方病院に襲いかかった観のある奇怪な事件である。
 しかも、違反したとする法令や、足りなかったとする在勤看護師数を誤認している。
 否、誤認と知りながら、誤った基準や誤認、虚偽の証言にもとづいて、有罪判決が下された。
 担当弁護士は、「健康保険法違反について争わず」として、警察・検察にたいして、何の異議も申し立てていない。
 日本の裁判は、裁判官が、検察の起訴内容を確認するだけなので、弁護側から、核心を衝く異議申し立てがなければ、求刑に近い判決が下される。
 静和病院事件の裁判では、先に、自供にもとづく共犯者の有罪判決を先行させ、同裁判の罪状認定や有罪判決を、後の院長と事務長の裁判に援用するという常套手段がとられた。
 したがって、今回の再審請求がとおれば、共犯者の有罪判決も撤回される。
 そうなれば、日本の裁判史上、前例のない不祥事となる。

 多くの再審請求が却下されるのは、有罪判決には、すでに、十分な審議が尽くされている、という理由からである。
 それに抵抗できるのは、捜査や司法手続きに、違法性があったことを証明して、司法の良心に訴えることだけであろう。
 再審請求をみるかぎり、静和病院事件は、無罪である。
 無罪であるにもかかわらず、有罪判決がでたのは、それなりの理由があるだろう。
 再審請求では、真実を知りながら誤った証言を誘導した静岡県警の誤導捜査と、虚偽の証拠をもちいた証拠捏造にふれている。
 これを証明して、世論に訴えることができれば、再審の可能性が見えてくる。

posted by 山本峯章 at 13:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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